江戸時代後期の漢詩における子供の表象
日本の文学において子どもは上代文学から現代文学にいたるまで多くの作品に登場してきた。それぞれの時代の文化的・社会的な環境に応じて、文学作品に登場した子どもの様相は多様である。しかし、どのような時代でも、子どもの世界は大人の世界と異なり、未熟さと無邪気さを持っている。江戸時代の文学の豊富な作品の中で、小説や俳諧などに子どもは登場している。文学における子どもは、その時代あるいは文学形態に応じて様々な視点から描写され、それについて研究もなされてきた。しかし、中国から日本に入ってきた漢詩というジャンルにおいて子どもがどのように表現されたのかに関しては、まだ十分に研究がなされていない。 日本における...
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Format: | Theses and Dissertations |
Language: | Japanese |
Published: |
2020
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Subjects: | |
Online Access: | http://repository.vnu.edu.vn/handle/VNU_123/89431 |
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Institution: | Vietnam National University, Hanoi |
Language: | Japanese |
Summary: | 日本の文学において子どもは上代文学から現代文学にいたるまで多くの作品に登場してきた。それぞれの時代の文化的・社会的な環境に応じて、文学作品に登場した子どもの様相は多様である。しかし、どのような時代でも、子どもの世界は大人の世界と異なり、未熟さと無邪気さを持っている。江戸時代の文学の豊富な作品の中で、小説や俳諧などに子どもは登場している。文学における子どもは、その時代あるいは文学形態に応じて様々な視点から描写され、それについて研究もなされてきた。しかし、中国から日本に入ってきた漢詩というジャンルにおいて子どもがどのように表現されたのかに関しては、まだ十分に研究がなされていない。
日本における漢詩は、漢文学が盛んになった江戸時代に最も隆盛し、漢詩人も多く輩出された。江戸時代の漢詩は江戸前期と江戸後期の二つの時期に大きく分けられる。そのうちで、江戸後期は漢詩人・漢詩ともに豊富な時期であったと言える。江戸後期は十八世紀後半から幕末までの約百年である。江戸後期の漢詩は江戸前期の漢詩と異なり、写生的な詩風を重んじる傾向がある。詩人は眼前の物事を忠実に詩に反映する。このような眼前の物事を詠じる中で、自然はもちろん、人間の生活も詩題となっていった。詩人と同じ世界を共有する大人以外に、別の世界を有する子どももまた大切な詩題となった。江戸後期の以前に子どもを詠む詩は少ないが、江戸後期の漢詩には多く登場してきた。
本研究の目的は、江戸後期の漢詩において子どもの表象を明らかにすることである。本研究で「漢詩における子どもの表象」を研究テーマに選んだ理由は、写生的な詩風を特徴とする江戸後期の漢詩のなかに、子どもが詠まれたものがあることを知り、子どもはどのように描写されたのか、なぜ子どもが漢詩に登場したのか、解明したいと考えたからである。これらは本研究における二つのリサーチクエスチョンである。 |
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